舞根地区 自然環境MAP
Moune Nature Map
道路復旧と地下水



舞根湾の奥には海岸道路がある。もともと干潟だった場所を埋め立てる際に、干拓堤防を兼ねて道路を建設された。その道路が大津波で被災して、道路下に空洞が出来たため車の通行ができなくなった。そこで道路を復旧することになったが、ボーリング調査の結果、砂と泥が20m堆積した軟弱地盤であることが判明した。軟弱地盤に道路を建設する際には、現在の土木基準では鋼矢板(鉄板)を地中深くまで打ち込んで、トラックなどの重量車両によって道路が傾かないようにしなければならない。
ここで環境上の問題となるのが、地下水である。福井県立大学の杉本亮先生は日本海側の流域で海底湧水を調査し、リアス式海岸のように大きな川が無く、森が海に迫っている地形では、多量の水と栄養塩が地下水によって海に供給されることを示している。ボーリング図では、海面下3m程度までが砂の層、それより下に約15mの粘土層となっており、砂層を地下水が流れていると予想された。
そこで、気仙沼市役所と協議して、砂層を流れる地下水を妨げないように「穴あき矢板」を採用してもらうように働きかけた。2017年に復旧工事は行われ、完成後に杉本先生に調査していただいた結果、多量の水と栄養塩が穴あき矢板を通じて海に供給されていることが確認された。目に見えない環境保全と言えよう。
執筆者:横山勝英(東京都立大学 都市環境学部・教授)