舞根地区 生物図鑑
ボラ
舞根湾奥・河口干潟の魚類
ボラ
Mugil cephalus cephalus Linnaeus, 1758

舞根のどこで見られるか
舞根湾の湾口から湾奥までの各地で見られ,西舞根川にも進入する.
本種は全世界の亜寒帯から熱帯まで分布し,沿岸の浅所や汽水域に多い.しばしば大群で河川を遡上し,人目をひきやすいためニュースになることもある.水面を飛び跳ねる行動も特徴的である.
震災後の分布や生息の特徴
震災から半年後の調査で,すでに舞根湾で本種の群れが記録されている.津波による撹乱から早いうちに回復できた魚種と言える.
コラム
卵巣は高級食材であるカラスミの材料となる.刺身にすると淡白な白身で美味であるが,泥をこしとって食べる習性により,海底の泥のにおいもつきやすい.このため,都市に近い内湾で漁獲されたボラは食材としては敬遠される.ハワイや東南アジアでは養殖や栽培漁業の対象種ともされてきた.
ボラは出世魚で,オボコ〜イナ〜ボラ〜トドなどと成長に伴い通称が変わる.「いなせなロコモーション」というサザンオールスターズの曲タイトルも,「とどのつまり」という慣用表現も,ボラの別名からきていることを考えると,日本人の文化に深く浸透した魚と言える.

写真の個体は,2024年3月に西舞根川で環境DNA調査のため採水していたところ,採水バッグに入ってしまったものである.3月の川では,上から見て魚の気配がなくとも,魚たちは活動を始めているのだろう.撮影後の個体は西舞根川に帰ってもらった.
執筆者:益田玲爾(京都大学 舞鶴水産実験所・教授)