舞根地区 自然環境MAP
Moune Nature Map
塩性湿地から河川への溶存鉄の溶出
舞根のどこで見られるか
塩性湿地と西舞根川が合流する地点よりも少し上流側(写真1の赤茶色)の河川域。
震災後の分布や特徴
震災後の2019年より、塩性湿地が周辺河川と舞根湾の環境・生態系に与える影響調査の一環として、湿地水・河川・海域の溶存鉄濃度、湿地土壌中の鉄含有量調査を行ってきた。その中で、西舞根川の当該域では目視でもわかる(赤茶色)高濃度の鉄濃度域が広がることが確認されている。
コラム
調査グループでは、陸域からの鉄が沿岸域の環境・生態系に与える影響を検討することを目的として、鉄の動態について調査を続けてきた。当初は舞根湾-気仙沼大島-大川河口域―気仙沼港にわたる海域調査を行い、とくに河川河口域(表層部)では、鉄濃度は陸域からの鉄供給の影響が大きいことを示す結果が得られた。塩性湿地については、2019年からの干潮時と干潮時の塩性湿地および西舞根川・東舞根川の調査の結果、同様に湿地が周辺河川への鉄供給源である可能性が示唆された。
写真1の当該域は、湿地からの水が西舞根川と合流する地点よりも上流であるが、右の写真のように湿地と河川を隔てる護岸の隙間からの湿地水の流入を確認している。この地点での溶存鉄濃度は、合流地点の鉄濃度の約10倍(9.4倍, 2022年3月調査)にもなる。一方で、川底を掘ると底質から水が染み出す様子もあり、鉄の供給源としては、湿地からの直接供給および川底からの湧水の両方の可能性が考えられる。
執筆者:山本 光夫(東京大学大学院農学生命科学研究科・教授)