舞根地区 自然環境MAP
Moune Nature Map
キートケロス・ディアデマ(珪藻の1種)
キートケロス・ディアデマ(珪藻の1種)
Chaetoceros diadema (Ehrenberg) Gran 1897


写真 キートケロス・ディアデマの多数の栄養細胞多数が連結した群体(左)と休眠胞子(右).1つの細胞の大きさはおおよそ0.04mm.長方形の栄養細胞の四隅からガラス質の細い針状の構造(刺毛)が1本ずつ伸びることがキートケロス属の特徴である.
舞根のどこで見られるか
キートケロス・ディアデマを含むキートケロスの仲間(属)は植物プランクトンと呼ばれるとても小さな生物で,顕微鏡で観察できる.栄養細胞は海水中から,休眠胞子は海底の泥の中から,ほとんど1年中,様々な種類のキートケロス属が観察される.
震災後の分布や生息の特徴
震災前後で変わることなく,最も頻繁に出現する植物プランクトンの仲間は珪藻類である.その中で最も出現頻度が高い種類(属)は,キートケロスである.水中では栄養細胞と呼ばれる形態で光合成を行って盛んに増殖(分裂)する.一方で,増殖に適さない時期には休眠胞子と呼ばれる植物の種子のような耐久細胞を形成して海底で休眠する.二枚貝やカイアシ類などの餌として重要であるだけでなく,食物網を通してほとんどの海洋生物のエネルギー源として利用される重要な生物群である.
コラム
早春に「春季ブルーム」と呼ばれる珪藻類の大量出現が発生する.大量に出現した珪藻類の色で海が緑に色づくのは春の風物詩である.マガキやホタテガイは大量の珪藻類を食べることで一気に栄養を蓄えるため味が乗る.
執筆者:夏池真史(北海道立総合研究機構 函館水産試験場・主査)