舞根地区 生物図鑑
ウナギ
舞根湾奥・河口干潟の魚類
ニホンウナギ
Anguilla japonica Temminck & Schlegel, 1846
舞根のどこで見られるか
舞根湾奥の塩性湿地や西舞根川の汽水〜淡水域でみられ、水底に沈めたアナゴ筒で捕獲できる。湾内(海水中)でも稀に捕獲される。
震災後の分布や生息の特徴
震災後、西舞根川で夜間観察すると頻繁に目撃できた年もあったが、個体数は安定せず近年はなかなか目撃できない。水中に仕掛けたカメラによって、満潮時に西舞根川の石組みの隙間で小型個体が何度か撮影されている。穴釣りで大型個体が捕獲できる日が来るだろうか。
一般的な特徴、生活史
日本・韓国・中国・台湾の河川、湖沼、河口から沿岸域まで広く生息する。生活史は降河回遊性で、主に淡水・汽水域で成長した後、成熟が始まると降海・回遊し、太平洋のマリアナ諸島西方海域で産卵する。
ふ化直後の透明なレプトセファルス幼生は、潮流により東アジアの沿岸域まで運ばれる。全長5~6 cmで針状のシラスウナギに変態し、日本では11月~4月に沿岸の河口域に接岸する。多くの個体は体の色づくクロコと呼ばれる段階で河川を遡上するが、一部は河口などの汽水域または沿岸域にとどまる。全長10 cm前後で黄ウナギとなり、数年から十数年かけて成長する。成熟が始まると体が銀化して銀ウナギとなり、9~11月に降海して産卵場への回遊を開始する。
黄ウナギは夜行性で、昼間は岩場や砂泥の中などの暗くて狭い場所に潜み、夜間に活動する。動物食性で、主にエビ類やカニ類、魚類、水生昆虫などを食べる。
資源量は1970年代から減少し、2014年には国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに絶滅危惧種(EN)として掲載された。減少要因として、河口域における養殖種苗用のシラスウナギの乱獲、黄ウナギの生息場である河川・河口域の環境悪化、産卵場に向かう銀ウナギの乱獲、レプトセファルスと銀ウナギの回遊に関わる海洋環境の変化などがあげられている。
執筆者:佐藤克文(東京大学大気海洋研究所・教授)、吉田 誠(同・特任研究員)